●画術師クーピィ 設定資料●

 不思議な力──「魔法」が当たり前のように存在する世界。その中でも異彩を放っていたのが、"画術"でした。  
 画術とは描いた絵に力を与える魔法で、使用する画材や作者の個性によって、まったく違う効果を発揮します。ある者は癒しの力、ある者は戦いの力、またある者は……。  

 ここは大画術師アーティスの住む、パレットの塔。最高位の実力を持ちながら、ひっそりと田舎で暮らしている彼を、周囲の人々は変わり者と言います。彼には7人の弟子がいました。すべて女の子で、年齢も様々…彼女たちは元々孤児だったのですが、彼が諸国を旅していたときに塔へと連れ帰ってきたのでした。今では皆、家族のように暮らしています。

<アーティスの弟子たち>

テンペラ…弟子の中では実力随一。自信家で気位が高く、高飛車な態度を取る事も多い。かなりの負けず嫌いで、あまり他人の事を認めようとしない。人の作品を見て「このぐらい私にもできる」「私の方が上手くやれる」などと憎まれ口を叩くので、嫌われたりトラブルの元になることも多い。反面、人一倍の努力家でもあり、陰で練習を積み重ねている。 しかし苦労している事を他人に知られる(弱みを見せる)のは我慢ならないらしく、弱音を吐くことは滅多にない。ひたむきだが世渡り下手な少女。地風火水などの物理的な攻撃の画術を得意としている。主画材は油彩。  
coopy_marker_s.gif (3485 バイト) マーカー…いつも少年のような恰好をしている。言動は流麗で仕草のひとつひとつに華があり、スター的な素養を持っている。驚いたことに都には女の子のファンも数多くいるらしい。別に同性に興味があるわけではないのだが、持って生まれた性質か、つい条件反射で親切にしてしまうようだ。とくに、マチエールやクーピィのような大人しめの子とは相性が合う。具現化(描いたものを現実にする)の画術を得意としている。  
coopy_acryl_s.gif (3657 バイト) アクリル…冷静沈着で寡黙──に見える。何を考えているのか見た目だけではわかりにくい。弟子の中では異端で、謎も多い少女。周りに合わせることが苦手で、常にマイペースな行動をとっている。 母親を亡くす前までは明るい子だったらしいが、今では滅多に感情を表に出さない(父親の素性は不明)。しかし唯一心を開いているクーピィにだけは、ときどき笑顔を見せることもあるようだ。彼女の画術には負のエネルギーが渦巻いていて、魔族に近い暗黒面の資質をもっている。
coopy_matiere_s.gif (4598 バイト) マチエール…控えめ、清楚で優しい。実力はあるのだが、テンペラやアクリルに遠慮して常に一歩引いているところがある。炊事・洗濯・裁縫のような家事が得意で、妹弟子やパレットで飼っている動物達の世話なども、進んで引き受けているようだ。それだけに争いごとがとても嫌いで、魔族など弱者を傷つけ・踏みにじるような存在には、理性を失うほどの激しい嫌悪感を抱いている。だがそんな気持ちになってしまう自分自身にも否定的な想いがある。治癒や防御の画術に秀でている。  
coopy_pastel_s.gif (3086 バイト) パステル…明るく行動的で、細かい事は気にしない。画術については、未熟ながらもすでに独自の世界を構築しており、批判されても落ちこんだりする事なく前向きに受けとめる。悩んでる暇があるなら描け!がモットーらしい(作者にとっては尊敬すべき資質…)。ただ、自分なりのこだわりというのはあるようで、それに反する事は絶対に受け付けない頑固一徹なところもある。また、弟子の中ではムードメーカー的な役割も果たす。
coopy_crayon_s.gif (3120 バイト) クレヨン…おませな性格で、背伸びしたがり。姉弟子たちにもタメ口をきいて不遜な態度を取る。クーピィとは同い年で愛用している画材も似ていることから、二人は直接的なライバルと言えるだろう。もっとも画力自体はクレヨンの方が上。彼女の認識ではクーピィは完全に格下扱いで、何かにつけて皮肉を言ったりからかったりして楽しんでいる。またアーティスに心酔しており、強引に迫っては師匠を困らせているようだ。変化の画術を得意としているが、まだ小動物にしかなれない。  
coopy_coopy_s.gif (2602 バイト) クーピィ…七人の中でも一番絵がへたで、みそっカス。外見も口調も幼い。天然ボケで鈍い所があるのか、クレヨンにいじめられたりしても絵の事以外ではそれほど凹むことはない。それでも自分の実力が姉弟子たちに及んでいない事は、強く意識しているようだ。小さいながらも芯がしっかりしており、曲がったことが大嫌い。と同時に、人の過ちをあっさり許す事ができる度量も持ち合わせている。花の絵を好んでよく描く。…というか、描けるものが余り多くない。自分では全く気づいていないが、その画術には著しく強力な「魅了」の作用がある。

<その他の登場人物>

coopy_artis_s.gif (3930 バイト) アーティス…都では伝説と化している、最高位の画術師の一人。すでに齢百を越えるというのに青年のような姿をしており、その実体は定かでない。物腰はとても柔和だが、はかり知れない画力(画術の総合力をこう呼ぶ)の持ち主で、敵に回すと最も恐ろしい男だと囁かれている。かなりの変わり者で都会の喧騒を嫌い、町外れにある塔にてひっそりと暮らしている。七人の弟子たちは皆溺愛しているが、特にクーピィの危なっかしさには目が離せないでいるらしい。
coopy_pencil_s.gif (1452 バイト) ペンシル…百年前、アーティスが初めて魔法に成功したときに出現させた黒い鳥。以来、彼の相談役・悪友という立場にいる。ただペンシル自身に魔力はない。目つきと口がとても悪く、よく弟子たちとケンカをしている。だが根は優しいようだ。  
coopy_gash_s.gif (4054 バイト) ガッシュ…魔法世界にその悪名を轟かせる、邪悪な魔王。かつて7つの王国を恐怖に陥れたが、5年前の大きな戦にて賢者達に破れる(7人の弟子も、この時に親を亡くし戦災孤児になっている)。その後魔界に籠もり、力を蓄えつつ復讐の機会をうかがっていた。顔にある傷はアーティスと対決した時に刻まれたもので、これにより、彼を始めとする画術師には特に深い憎しみを抱いている。愛や優しさなど知らない魔人だが、ふとした事からクーピィに出会いふれあう事で、彼の中で何かが変わりはじめていく……お互いが敵同士である事も知らずに。  

<未登場の人物> 
  
近所の青年セーブル、画材商ポスカラ、学者フレスコ、暗黒神ヴァリオス等、登場人物の名前はすべて絵画に関するものに由来しています。

<後記> 
  
 この作品は、2000年8月にメディアワークスから発行された「電撃CGクリエイターズ」に掲載した物の改定版です。今回あらかじめ用意されていたテーマ競作のお題が、「幻想世界の少女」──ということで、ぜひ参加したいとは思ったものの、何を描くか悩みました。ファンタジーというのは簡単そうに見えて、ちゃんと作ろうとすると相当の実力を要求される難しいジャンルだと思います。世界を一から構築してその上説得力を持たせるのは大変なことだし、たとえ奇跡的にうまく作れたとしても、短いページの中には到底おさまりきらない。というわけで自分の能力と相談した結果、世界設定その他諸々はありふれた物にする事にしました。ただこれだけではつまらないので、魔法の種類を特化する方向で考え、出てきたのが"画術"の設定です。これは脈絡なく決まったわけではなく、最初にこのムックが絵描きを紹介する本だと聞いて、それを前提に「じゃあ絵描きをテーマにした物語にしよう」という所から来ています。  

 絵を描いていて悩んだ事のない人は、まず居ないのではないでしょうか。クーピィのように、他人と自分を比較して劣等感を感じている方も多いと思いますし、私もその内の一人です。今回の話は、絵を発表するという目的だけでなく、そんな自分を励ます…まあ、そんなような意味でも、それなりに書いた甲斐はあったと感じました。「自分にしかできない事がある」というアーティスの言葉を心から信じられるよう、これからも精進したいなあと思います。ここまで読んで下さってありがとうございました。

画術師クーピィ
Art magician coopy